犬の僧帽弁閉鎖不全症の診察の流れ

犬の僧帽弁閉鎖不全症

「診断が大事なのは分かったけど、どんな感じで診断がされるのかイメージがわかない」という人もいると思います。
ここでは獣医療関係者でなければ分かりにくい、診察の流れを説明します。

診察の流れ

診察の流れを大まかにまとめると、以下のようになります。

●動物の情報集め、話を聞く
 ↓
●身体検査
 ↓
●分かったことをまとめて次の方針を決める
 ↓
●追加の検査
 心エコー、胸部レントゲン、心電図、血圧など
 ↓
●診断
 病名と程度をはっきりさせる
 ↓
●治療

状況によってやりかたは変わりますが、これが基本の流れです。

診察の例

よりイメージができるように、例を挙げてみます。
獣医さんになったつもりで読んでみてください。

●動物の情報集め、話を聞く
チワワ 10歳 去勢オス フィラリア予防済み
ワクチン接種のため来院
「自宅では元気。食欲もあるし排泄も問題ない。たまに咳き込むのが気になると言えば気になる」とのこと
 ↓
●身体検査
様子を確認したり、身体を触ったり、聴診器で音を聴いたりする検査
心臓の音を聴いたら、胸の左側から中くらいの音量の心雑音が聴こえた
その他は問題なし
 ↓
●分かったことをまとめて方針を決める
心雑音が聴こえたので、心臓病の疑いがある
フィラリア感染症は予防をしているので可能性は低い
犬種や年齢も考えると、僧帽弁閉鎖不全症が疑われる
たまに咳き込んでいるのも心臓病が関係しているかもしれない
僧帽弁の状態を調べられる心エコー検査と、心臓のサイズや肺の状態が分かる胸部レントゲン検査をおすすめ
 ↓
●追加の検査
心エコーで、僧帽弁の変化と血液の逆流を発見。心臓のサイズは正常範囲内
胸部レントゲンで、心臓の形や肺の領域に問題がないことを確認
 ↓
●診断
僧帽弁閉鎖不全症
程度は軽い(ACVIM分類のステージB1)
まだ症状が出るほどの段階でないので、咳は心臓病とは関係なさそう
 ↓
●治療
心臓のお薬はまだ不要
その他の生活制限も不要
定期的な心臓のチェックをおすすめ

繰り返しますが、状況によってやりかたは変わるので、この通りでなければダメとは言えませんが、基本的な流れはつかめたでしょうか?
愛犬の診断が「お話だけ」とか「聴診しただけ」でされているなら、一度しっかり調べておくことの意義は大きいと思います。